人間ドックの移り変わり
進歩する人間ドックの歴史
人間ドックには大きく分けて2種類あります。ひとつは病院や関連ホテルに宿泊して行う「入院の人間ドック」です。もうひとつは入院あるいは宿泊せずに1日でドック健診を行う「総合健診」です。
入院の人間ドックは昭和29年に東京のある病院で6日間の入院による全身的な「短期入院総合精密身体検査」として始められました。健康人の健康診断のための入院は当時、画期的なこととして注目され、新聞がこれを船のドック入りにたとえて、「人間ドック」と命名したといいます。今日ではこの名称が正式名としてすっかり定着しています。
昭和33年ごろから内科的な検査を主とした1泊2日の入院ドックが行われるようになり、これが入院ドックの基本型になって「短期人間ドック」または「一泊人間ドック」と呼ばれ、現在まで続いています。当時のドックは受診者側の時間的・経済的な制約と、施設側の整備の関係で、受診者は特定の人に限られ、その数は多くはありませんでした。
一方、昭和37年ごろには医療機器の自動化やコンピューターを利用したデータ処理で多人数のドック健診を可能にしたシステムがアメリカで開発されました。この新しいシステムを利用し、日本人の感覚にあうように人間ドックとして構築された自動化健診システムが昭和41年ごろ東京でスタートしました。自動化健診は昭和56年ごろ発展的に総合健診と名称を変え、人間ドックとほぼ同じ健診内容を半日で、しかも入院せずに外来形式で受診できるようになって多くの人が手軽に利用できるようになりました。
この総合健診は、人間ドックの普及版として全国的に広がり、今日では総合健診が主流となり年間の総合健診受診者は170万人に達するといわれています。
50年にわたる人間ドックの歴史の間に私たちの生活環境は大きく変わると同時に、日本人の主な疾患も変化してきました。脳卒中に変わって心臓病が増加し、胃がんは相変わらず多いものの、大腸がん・肺がんが増加しています。それに対して、人間ドックの健診内容も進歩してきました。
過去の人間ドックの目的は病気の早期発見(二次予防)が中心的な考えでした。しかし、現代の疾患の多くが生活習慣の乱れによる原因疾患であることを考えると、最近では病気の発症予防や健康づくり(1次予防)としての役割にそのウエイトがシフトしていっています。